ドキドキした。諦めていたものが手に入るという不思議な感触。世間の穿った目から逃れられるだけで満足だったのに、違う人間になるというだけで、こうも未来が変わるものなのか。

「家庭環境は父子家庭。母親は3年前に事故で死別」

 説明が淡々と進むにつれ、今度は目の前が暗くなった。当たり前だが家族がいる。何の根拠もなく、これからは一人で生きていくものだと思っていたが、確かに15歳の小娘が、一人暮らしなぞ不自然極まりない。

 しかし――会ったこともない家族が見ず知らずの私を受け入れるというメカニズムが想像できない。

「無理です。その人が私のことを娘だなんて認識するはずがないです。それに――」

 見ず知らずの男の人と、一つ屋根の下で暮らすなんて。

「安心しろ。父になる男も……俺の客だ」

 ――客。つまり、新しい人生を買ったということか。だからといって不安が全て払拭するわけじゃない。むしろお互い暗い過去があるということで、犯罪のきっかけになるのではないか、とさえ感じてしまう。

「大丈夫だって。嬢ちゃんには手は出さねぇよ」
「何でそんなこと言い切れるんですか?」