佐藤は5分ほどで戻ってきた。

 手には缶が2つ。佐藤は無糖のものを、私にはカフェ・オ・レを買ってきてくれた。

「いただきます」

 プルトップを開ける。口に運べば優しい甘みが口一杯に広がった。思い返せば、缶の飲み物なんて久方ぶりに飲む。美味しいなと思って、パッケージを改めて見なおした。

「で、話続けんぞ」

 視線を佐藤に移す。

「はい」

「今から嬢ちゃんの新しい家に行く」

 家と聞いて、心がうずく。

「いいか? 今から嬢ちゃんは田中伊織だ。年齢は15歳。中学3年生。来年には高校に上がる女の子だ」

 高校――と聞いてハッとする。

「高校に行けるんですか?」
「今時、高校くらい普通だろ? 安心しろ。嬢ちゃんの成績なら問題ないくらいのレベルの高校だ。そこの普通科に通ってもらう」