「薄い方はすぐにでも覚えなきゃならねぇ情報だ。これを覚えるまでは外に出るなよ。で、分厚い方はそれに比べれば後回しにしても構わない内容が集められてる。言っとくけど家電の説明書とは違うからな。必ず全部頭に入れろよ。そうしないとどこで辻褄が合わなくなるか分かったもんじゃねぇからな」

 私がうなずくと、佐藤も満足げにうなずき返す。

「世間一般、法的にも常識的にも本来ならしちゃいけねぇことをしてるっていう意識だけは持ち続けろよ。で、今からだが――」

 そう言いかけて、佐藤は柏手を打つ。

「そうだそうだ。コーヒーが飲みたくてコンビニ寄ったんだった」

 佐藤が運転席のドアに手をかけた。

「嬢ちゃんも何か飲むか? コーヒーでいいか? それとも違うものがいいか?」
「じゃあ……」

 鞄から財布を出すと、佐藤はそれを手で制した。

「ガキから金なんて取らねぇよ。それくらい奢ってやる」

 温かいココアのようなものがあれば欲しいと伝えた。それがなければカフェ・オ・レのようなものをと。