いつ、母に話を切り出そうかとタイミングを測っていた2月のある日の登校途中、歩く私の隣にSUVタイプの車が横付けされた。

 田畑が多く軽トラばかり見かけるこの場所で、これほど大きい車は珍しい。不審に思い、私は咄嗟に身構えたが、運転席の窓が開き、佐藤の顔が見えた途端に、不覚にも私は泣いてしまった。

「おいおい、俺の顔見ただけで泣く奴があるか」
「だって……」

 騙されたと思っていた。お小遣いも取られたし、何より、希望を失った。

 毎日のように、顔を机に向け、一時的にでも希望を持たせた佐藤に対して、念仏のように恨みつらみばかり口ずさんでいたように思う。

 ハンカチで目を押さえる私に対して、明らかに佐藤はたじろいでいた。

「嬢ちゃん、この状況を誰かに見られるのはマズイんだ。とにかく助手席乗ってくれるか?」

 車は私の数歩先で路肩に寄せて止まり、私は間髪入れず助手席に飛び乗った。

 シートベルトをするかしないかというタイミングで既に車は発進していた。