考えようによっては以前とさほど変わらないのだ。

 そんなこんなで佐藤から連絡がないまま年を越え、三学期を迎えた。初めこそ、その日を、その瞬間をと連絡を指折り数えていたものの、この頃になるとそれも止めていた。

 騙されたんだ。そう理解した。単なる個人情報を引き出すための罠だったのか。小銭とは言え、手付けを手に入れるためだったのか。

 不思議と後悔はしなかった。あの時の状況を鑑みたら、今だってきっと同じ行動をすることが分かっているからだ。

 気持ち自体は割り切れていたが、だからと言って状況が好転するわけもなく、学校で父の事件がバレたことを母に話さなければならないことに何ら変わりはない。

 ただ幸いなことに母の職場はここからバスで30分以上かかる場所にあり、職場に学校関係者がいない。母の様子を見る限り、学校で私が置かれている状況は母の耳には届いていない。

 中学卒業まであと少し。このまま突き進んでしまおうかと考えなかったら嘘になる。

 でも春から通うはずの私の職場は学校から徒歩5分くらいの距離にあった。

 そもそも学校の推薦を貰っての就職内定だ。その時点で、いつ何時、社長の耳に父の事件が届いてもおかしくない。

 何年も、職場の誰にも事件のことを知られず平々凡々と過ごしていけるなんて甘いことは考えてはいない。どう転んでも私たちがこの町に居続けることは難しい。残念だが、それが現実だ。