次の日、教室の床に紙切れが落ちているのを発見した。クラスで回しているメモの類だろう。女の子同士がよくやる奴だ。私の元に届いたことはないが、何度か頼まれて隣に回したことがある。

 メモということは基本、特定の人以外には知られたくない内容が書かれているものだ。そのままにしておくのもマズイだろう。ゴミ箱に捨てようと紙切れを拾い、捨てる前に何の気なし広げてみた。

 ――胡桃山って犯罪者の娘らしいよ。

 紆余曲折を全て端折って、ついでに事実まで捻じ曲げられ、まさか"犯罪者の娘"呼ばわりされてることには驚いた。

 悲し過ぎて笑いがこみ上げてきた。声を上げず肩を震わせて笑い、心の中で号泣した。

 目の前が暗くなったが、私は歯を食いしばって男の連絡をただひたすらに待ち続けた。希望があれば大抵のことは我慢できることを初めて知った。

 居心地の悪さも喉元過ぎればという奴で、しばらくしたら最初の頃ほど気にならなくなった。思い返せば、元々、私はほとんど学校生活において誰かと会話をしていない。