恐らくは、いや、きっと本名ではないだろう。佐藤なんてきっと日本でもトップスリーに入るくらい多い名字だ。

 それでも私は男が佐藤だと名乗る以上は、そう認識することにした。

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 外はめっきり暗くなっていた。飲食店でも早いシャッターも下ろしてしまてっている店がちらほら見受けられた。

 寒さに体を丸める。母はとっくに帰宅しているはずだ。普段、夜遊びなんかしない娘を心配しているに違いない。

 急に寂しくなって、私は足を早めた。私はあとどれくらい母と一緒にいられるのだろう。