古川雄大の証言により、営業マン――馬酔木和成《あしびかずなり》は逮捕されたものの、父は帰らぬ人となった。

 私の母は犯罪被害者になった。

 殺人か――傷害致死か。馬酔木の殺意の有無が論点となった。しかし馬酔木は殺意どころか殺人自体を否定した。

 しかし否認したまま馬酔木は起訴されている。

 生活の基盤が崩されたものの、せめてもの救いは周囲の温かな言葉があったからだ。生活自体が楽になることなかったが、少なくとも生きる活力は得ることができていた。

 風向きが変わったのはとある雑誌に書かれた記事が明るみになってからだ。

 その記事の内容はでたらめだった。

 父が馬酔木和成を脅していた、であるとか、金銭を要求し、それを断ったがために取引の停止を申し出た、であるとか。そもそもナイフを突きつけたのは父の方で、事件は殺人でも傷害致死でもなく正当防衛だったのではないかと書かれていたものもあった。

 さすがに不安になり、事件を担当してくれた警察官に聞いてみたものの、取り調べでそのような事実は出てきていないと教えてくれて、胸をなでおろしたことを覚えている。