「分かった。分かったから!! 客には手を出さない主義なんだ。そもそも子供には興味がねぇし」

 とにかく、落ち着け。な? もう一度座れ。座ってくれ。はい、深呼吸して。吸ってぇ、吐いてぇ。そうだ。そうそう。念の為もう一度、深呼吸してみようか。

 男が私を必死になだめる様は可愛らしくもあった。

「もう一度、ポストにチラシを入れてやるから。そのチラシを見て、嬢ちゃんの母親が連絡してくればもちろん対応する。な? それならいいだろ? そうだ。そうしよう」

「ならまず私が説明します」
「それはダメだ。チラシを入れるのは嬢ちゃんの件が終わってからだ」

 私が母の元を去った後ということになる。

「もしそれまでに今日の話をしたら――その時は嬢ちゃんの分もご破算だ」
「何故ですか?」
「根本的な決まりごとだからだ。誰にも人生を買ったことも前の自分のこともを話すな。親でも恋人でも例外じゃねぇ」
「でも、そんなこと――」

 できるわけないじゃないか。後半部分は言わせてもらえなかった。