イラッとしてしまって少し声を荒げてしまった。

「いきなり15歳から始まる人生は世の中にあるのか? 誰から生まれて、どんな幼少期を過ごしたか聞かれたどうする? 適当にごまかすか? ごまかし切れるのか?」

 そう言われれば、ぐうの音も出ない。

「作れるわけねぇじゃねぇかよ。そんなもん、すぐバレちまうって」

 仕方ねぇなあ。男はキーボードから手を離し、私の方を真っ直ぐに見た。

 粗暴で髭面のくたびれた中年男のイメージだったが、男の目は予想以上に澄んでいた。そんなイメージを持っていたからか、私の方が恥ずかしくなって目を伏せた。おい、聞いてるのか。すぐに男に注意された。

「……はい、聞いています」
「仕方ないから説明してやる」

 一回だけだぞ、と言葉が続いた。電話越しにも聞いたセリフだ。この"一回だけだぞ"は男の口癖なのだろうか。

「今、毎年、どれくらいの行方不明者がいるか知ってるか?」
「……分かりません」