それでも不思議とそこまで嫌悪感を抱かずにいられるのは、どこかギリシャ彫刻を彷彿とさせる彫りの深さと絶妙な顔のパーツの配置の妙だろう。

 それでもベースが日本人だ。ハーフとかクォータとか、異国の血は感じさせない。

 年齢は――私の親と同じ年代か少し若い程度か。

「名前は?」

 油断していると男の質問がいきなり始まった。

「えっと……胡桃山美月です」

 虚を付かれて声が裏返った。

「年」
「15です」
「あ、悪い。誕生日も」
「7月22日です。あの……これは?」
「新しい人生を得るのに必要な手続きだ。我慢してくれ」

 想像していた段取りと違って戸惑ってしまう。料金がいくらだとか、どのような人生がいいのだとか、カタログのようなものか、もしくは表のようなものを見せられて、こちら本位で進められるものだと思っていた。