感極まるのを抑えつつ、私はドアを開けた。
グレーのパーティションがいきなり視界に入り、足が止まる。
「いいから中まで来いって」
「……はい」
促され、さらに中に踏み込めば、グレーのスチールデスクが一つあり、卓上にパソコンのディスプレイがある。そのディスプレイに向かうように一人の中年男性が座っていた。男はしばらくは画面に目を向けていたが、やがて私の方に目を向けた。
「随分と大人びた嬢ちゃんだな」
クラスメイトからもよく言われた。胡桃山さんって大人っぽいよねって。
確かに人よりは背が高い。165センチあるのだ。だがノッポなだけだ。体質的なのか栄養が不足しているのか、細身で手足も木の枝のように細い。ついでに言えば胸も育たなかった。母は標準的には胸が
ある人だったから、遺伝とは言いがたい。
第一、大人っぽいと言ってくれていても、周囲の私の評価が芳しいかと言えばそうでもない。
人との接触をできる限り抑えている私の評価は、人付き合いの悪いちょっと暗い奴だ。
グレーのパーティションがいきなり視界に入り、足が止まる。
「いいから中まで来いって」
「……はい」
促され、さらに中に踏み込めば、グレーのスチールデスクが一つあり、卓上にパソコンのディスプレイがある。そのディスプレイに向かうように一人の中年男性が座っていた。男はしばらくは画面に目を向けていたが、やがて私の方に目を向けた。
「随分と大人びた嬢ちゃんだな」
クラスメイトからもよく言われた。胡桃山さんって大人っぽいよねって。
確かに人よりは背が高い。165センチあるのだ。だがノッポなだけだ。体質的なのか栄養が不足しているのか、細身で手足も木の枝のように細い。ついでに言えば胸も育たなかった。母は標準的には胸が
ある人だったから、遺伝とは言いがたい。
第一、大人っぽいと言ってくれていても、周囲の私の評価が芳しいかと言えばそうでもない。
人との接触をできる限り抑えている私の評価は、人付き合いの悪いちょっと暗い奴だ。