男の言うなりにバスに20分ほど揺られ、降りた場所は、今住んでいる町から一番近い繁華街だ。

 バスを降りると、寒さに震えながらグルリと周囲を見渡した。正面には大きな銀行の建物。その背後にはシティホテルがある。シティホテルの隣には、カラオケボックスも見えた。

 最初の目印は、三階建ての整形外科の建物だった。進むべきは整形外科と郵便局の間の路地。そこを入れと言われている。

 ほどなくしてそれらしい路地を見つけ、私はそれに従った。

 路地を500メートルほど進み、タバコ屋の角を右折する。手が冷たくて、口の前に両手を持ってきて息を吹きかける。登校の際は手袋もつけていくのだが、焦っていて家に忘れてしまった。

 オドオドしながら路地をしばらく進むと、レンガ調の5階建てのビルが見えてきた。隣の建物の1階はコンビニ。空色地に白の牛乳瓶が描かれた看板。ビルの名前は教えてもらえなかったが、建物も隣のコンビニも、男の説明と特徴は一致する。

 ――ここだ。

 入り口付近にテナントの一覧が貼られていた。1階は喫茶店。2階は鍼灸院と歯医者が入っている。3階から上は空白だ。