信頼していい相手なのかも分からないまま、心の叫びを口にしていた。

「っていうのは買うってことでいいんだな?」
「買う?」
「おいおいら新しい人生なんてそこらへんに転がってるわけないだろ。買うんだよ」
「そんなお金持ってません」
「なら、この話は終わりだ」
「待ってください。できるだけ早くお金を用意します。用意できたらまたこの電話に連絡します」
「おいおい……」

 電話の主の声が曇る。

「そんなチャンスがいつまでも転がってるわけなぇだろ? この電話番号はこれっきりだ。二度と通じねぇ」
「だったら、どうやって連絡を取れば」

 目の前が暗くなる。せっかくのチャンスだ。このチャンスを逃したら、きっと次はない。

「これはな、嬢ちゃんみたいな境遇の人間の中から選ばれたもんだけが手に入れることのできる尊いもんだ。二度目なんてねぇ。まぁ、のんびり待ってたら、もしかしたら死ぬまでにチラシがポストに入るんかもしれねぇがな」