畢竟、私が事件の真相を知ることもなく、港には行かず、ただ佐藤から新しい知らせが届くのを待ちながら、島での三ヶ月間を滞りなく過ごしていたことだろう。

 これを計画と呼ぶにはあまりにも杜撰過ぎる。

 ならば偶然というのか。殺人犯(とされた)の息子と被害者の娘である私が同じ人物の人生を歩むのも、バイト先で知り合うのも、愛し合ったのも、私が一方的に憎むのも、島で再会するのも、真相を知った私が包丁を持って港に行くのも、別人になった母が、私の身代わりに古川を刺すのも。

 真相を確認しようにももう手遅れだ。最後に佐藤に会った時にもらった携帯番号は既に使えなくなっていたし、殺人犯となってしまった今、例え他人としてでも、母は私とは接触しない。

「お母さーん!!」

 不意に私を呼ぶ声がして、庭に目をむけると美桜が私に手を振っていた。隣でレオも目一杯尻尾を振っている。

 私も負けじと手を振り返す。