そこまでお膳立てをしておきながら、つい数年前まで復讐が成し遂げられなかった理由は分からない。古川が今田と名乗り、別人となってしまったことにより、その行方を探すのに手間取ったのか、罪を犯してしまうと私の行く末を見届けられず、私が幸せになるのを確認してから、古川に鉄槌を下そうと思ったのか。

 しかし悠長なことはいってられなくなった。真相を知ってしまった私が、古川のいる漁港にやってきてしまったからだ。

 一刻の猶予もないと感じた母は、ひったくるように私から包丁を取り上げ、そのまま古川を断罪に処した。
 
 そこで私はハッとした。

 田中伊織になったばかりの頃、しばらくは監視がつくと佐藤が言っていたのを思い出したのだ。その監視は哲史なのではと勘ぐっていた時期があるにはあったが、結局、誰かは分からなかった。でも監視していたのが母ならば、いや、母だからこそ占い師として私と対峙した時、ズバズバと何もかもを当ててることができた。そう説明がつく。

 でもそうなると、古川のいるあの町で3日も滞在させた理由が分からない。

 いや――違う。私は唇を噛んだ。主導権を握っているのは佐藤の方だ。