「あんたは苦労してきたんだろ? 周囲からの暴言に、切っても切っても止まない電話に、壁のいたずら書きに。窓だって何度も何度も割られた。怖くて眠れない夜もあった。だから逃げて逃げて逃げ回って、それでも……どこまで行っても降り注ぐ罵詈雑言に絶望して、新しい人生を歩むって決意したんじゃないのかい?」
コクリとうなずく。
「世界で一番その苦労を理解しているのは誰だい? 分かってるんだろ? そうさ、その腹の子供の父親さ。その男もまた周囲から攻撃され続けてきたはずだ。いや、向こうは世間的には殺人犯の息子だ。もっともっとひどい仕打ちを受けてきたに違いない。それなのに……」
占い師が私の胸を拳で叩く。ゆっくりと何度も何度も。
「それなのに……あんたが思い違いのレッテルを彼に貼ってどうするんだい? それじゃあ、あんたを追いやった周囲のクズどもと何にも変わらないじゃないか」
ハッとした。馬酔木和成は長年恨んできた男だ。事件の真相が分かり、怒りの矛先が古川に向かっても尚、すぐにわだかまりが溶けることなかった。自分の中での落としどころが見つからなかったからだ。
「あんたはこんなところでくだらない男に刃先を向けてる場合じゃないんだよ。さっさと島に戻って、あの男と今後のことを話さなきゃならない。話し合うことは山積みだ。お腹の子供も待っちゃあくれない」
「でも……」
古川はどうするのだ。あの男を見逃すのか。あんな外道が無罪放免でいいのか。
コクリとうなずく。
「世界で一番その苦労を理解しているのは誰だい? 分かってるんだろ? そうさ、その腹の子供の父親さ。その男もまた周囲から攻撃され続けてきたはずだ。いや、向こうは世間的には殺人犯の息子だ。もっともっとひどい仕打ちを受けてきたに違いない。それなのに……」
占い師が私の胸を拳で叩く。ゆっくりと何度も何度も。
「それなのに……あんたが思い違いのレッテルを彼に貼ってどうするんだい? それじゃあ、あんたを追いやった周囲のクズどもと何にも変わらないじゃないか」
ハッとした。馬酔木和成は長年恨んできた男だ。事件の真相が分かり、怒りの矛先が古川に向かっても尚、すぐにわだかまりが溶けることなかった。自分の中での落としどころが見つからなかったからだ。
「あんたはこんなところでくだらない男に刃先を向けてる場合じゃないんだよ。さっさと島に戻って、あの男と今後のことを話さなきゃならない。話し合うことは山積みだ。お腹の子供も待っちゃあくれない」
「でも……」
古川はどうするのだ。あの男を見逃すのか。あんな外道が無罪放免でいいのか。