子供の屁理屈と大差ない。弁護側、検察側、司法とそれぞれ均等の距離感を保つべきなのに、どうしてか司法も検察の意見を支持した。だからこその有罪判決だ。
「何で裁判中にこの報告書を出さなかったの?」
それでも――この報告書さえあれば結果が覆ったのではないか。そう思うくらいに、この報告書は説得力があった。
「父さんにもこの報告書で裁判を戦おうって言ったよ。でも、その頃から僕は何度も何度も命を狙われたんだ。ホームから線路に突き落とされそうになった。車で轢かれそうになった。周囲全ての人間が敵に見えたよ。父さんは言ったんだ、殺されたら意味がないって。いずれチャンスは来るから、報告書を持ってとにかく逃げろって」
陵は感極まったのか目頭を押さえ、言葉を途切らせた。
「僕は逃げて逃げて逃げ回った。絶対にチャンスが来るって信じてた。なのに……そうこうしている間に、父さんの有罪は確定して、あげくに刑務所内で死んだ」
心筋梗塞だとテレビでは報じていたが、真偽のほどは分からない。
「僕は一人ぼっちになった。もう……どうでもいいやって思ってね、階段を上ったんだ。マンションの屋上に向かって。飛び降りたら楽になれるかなと思って。その途中でいきなり階段に顔を出したいかがわしいおっさんに声をかけられた」
「いかがわしいおっさん?」
「そう。名前は知らない。顔もそこらへんにいそうな普通な感じで印象に残らないような。そのおっさんは僕に言ったんだよ。何絶望してんだよ、まだまだやれることあんじゃねぇかって」
「何で裁判中にこの報告書を出さなかったの?」
それでも――この報告書さえあれば結果が覆ったのではないか。そう思うくらいに、この報告書は説得力があった。
「父さんにもこの報告書で裁判を戦おうって言ったよ。でも、その頃から僕は何度も何度も命を狙われたんだ。ホームから線路に突き落とされそうになった。車で轢かれそうになった。周囲全ての人間が敵に見えたよ。父さんは言ったんだ、殺されたら意味がないって。いずれチャンスは来るから、報告書を持ってとにかく逃げろって」
陵は感極まったのか目頭を押さえ、言葉を途切らせた。
「僕は逃げて逃げて逃げ回った。絶対にチャンスが来るって信じてた。なのに……そうこうしている間に、父さんの有罪は確定して、あげくに刑務所内で死んだ」
心筋梗塞だとテレビでは報じていたが、真偽のほどは分からない。
「僕は一人ぼっちになった。もう……どうでもいいやって思ってね、階段を上ったんだ。マンションの屋上に向かって。飛び降りたら楽になれるかなと思って。その途中でいきなり階段に顔を出したいかがわしいおっさんに声をかけられた」
「いかがわしいおっさん?」
「そう。名前は知らない。顔もそこらへんにいそうな普通な感じで印象に残らないような。そのおっさんは僕に言ったんだよ。何絶望してんだよ、まだまだやれることあんじゃねぇかって」