警察の発表によると、父が一方的に和成を責め、会社同士の取引停止を申し出ているとあるが、報告書では少し違う。

 確かに和成の勤める会社の対応はよくなかった。配送スタッフの不手際も多い。取引停止を実は和成は一旦飲んだという。一旦とは迷惑のかからない体制が整ったらもう一度チャンスが欲しいというもので、父もその話は受け入れていた。

 これは休憩室に入る前に多くのスタッフの前で話された内容であり、信憑性は高い。
 
「じゃあ……どうして事件になんか……」

 なり得ないではないか。殺意がなかった。ナイフを握れなかった。いや、そもそも揉め事さえなかったのならば、何も起こらなかったはずだ。

「その後、僕の父と君のお父さんは休憩室に入った。そしてどうしてが事件が起きた。誰も見ていない空間で一体何が起きたのか」
「何故……?」
「休憩室には先に真犯人が入っていた」
「真犯人?」

 陵がファイルを数ページめくった。私はそのページに目を落とした。