「今度、向かいに越してきました胡桃山と申します」

 頭を上げ、手にしていた紙袋を差し出す――はずだった。
 
「何故……」

 手が震える。神はどこまで意地悪なんだろう。未だかつてをこれほど神を憎んだことはない。きまぐれか。それとも天罰か。

 目の前にいたのはかつて愛した男だ。同じ名前を共有し、それ故に結婚が叶わなかった男。同時に父を殺した犯人の息子でもある。

 日に焼け、髪の毛が短くなっていたも見間違えるはずがない。

 私はすぐさま踵を返した。

 しかし彼に腕を捕まれた。私は彼をにらみ返す。