今日は休みをもらっていて、朝からのんびりしている。のんびりといえば聞こえがいいが、とにかくすることが見つからない。暇。退屈。手持ち無沙汰。ここに長く居座る気もないから、趣味も探せない。

 洗濯はある程度溜めてから。掃除はほどほどに。食材はなんだかんだとおすそ分けで足りてしまっている。調味料やちょっとした雑貨は野島雑貨店に売っているから、仕事の日に済ますことができる。

 強いていうならば、野島雑貨店にはポン酢が置いていない。島唯一のスーパーマーケットになら置いているだろうか。
 
 そのスーパーマーケットは島の繁華街――とはいえ大して栄えてはいないが――の港エリアにある。

 でも、その港に出るのが一苦労なのだ。

 歩くには距離があり過ぎる。峠を二つばかり越さないといけない。バスもないことはないが、一日に数本といった塩梅で積極的に使いたいと思えない。あとは近所の人の車に乗せていってもらうかタクシーを呼ぶくらいしか方法がない。
 
 却下だ、却下。ポン酢ごときで港にいく必要もない。
 
 暇だな。昼も回り、ただただテレビをつけてダラダラしていた。別段、見たい番組というわけではなく、あくまでBGM代わりとして。

 その時、車のエンジン音がして、すぐ近くで止まった。私は立ち上がって、リビングのカーテンを開けた。