佐藤からもらった逃避行用のお金は、普通のサラリーマンなら二か月分ほど残っていた。お試しでも仕事をするのなら、少しくらい賃金ももらえるのだろうし、家賃、光熱費がかからないのであれば三か月くらいなら持ちこたえられるはずだ。

「ならいい。万が一、何か困ったことがあったら連絡してくれ」

 佐藤に手渡されたメモには見たことのない携帯番号が記されていた。

「ありがとうございます」

 私にとって佐藤の携帯番号はお守りだ。綺麗に畳んで保管しておく。