佐藤が大事そうに下げていた大きな紙袋の中身は挨拶用の手土産だった。中身は定番の煎餅《せんべい》の詰め合わせ。センスが古いと言ったら、こういう場所はむしろ古臭いくらいのものの方が喜ばれるんだと佐藤は断言した。
その後、佐藤に連れられ、地区会長さんのところに挨拶に行き、役所の場所を教えられた。近所の挨拶もいくつか済ませた。
佐藤の言うとおり、煎餅の詰め合わせはすこぶる評判がよく、その度にほらな? と佐藤が得意顔をするものだから、いちいち勘に触る。しかし結果が結果なだけに何も言い返すことができなかった。
夜は港にほど近い小料理屋で早めの夕食を佐藤と食べた。思い返せば顔を突き合わせてご飯を食べることは初めてのことで――知り合ってからそれなりに年月は経っているものの――何だか無性におかしくなって笑ってしまった。
釣られて佐藤も笑った。
その晩ごはんも佐藤におごってもらった。
「金は残ってるか?」
店を出て、佐藤は私を振り返る。
「あ、残ってます。お返ししますよ」
「いや、それはいい。当面の生活費があればいいが、なければいくらか置いておこうと思ってな」
「それは……大丈夫だと思います」
その後、佐藤に連れられ、地区会長さんのところに挨拶に行き、役所の場所を教えられた。近所の挨拶もいくつか済ませた。
佐藤の言うとおり、煎餅の詰め合わせはすこぶる評判がよく、その度にほらな? と佐藤が得意顔をするものだから、いちいち勘に触る。しかし結果が結果なだけに何も言い返すことができなかった。
夜は港にほど近い小料理屋で早めの夕食を佐藤と食べた。思い返せば顔を突き合わせてご飯を食べることは初めてのことで――知り合ってからそれなりに年月は経っているものの――何だか無性におかしくなって笑ってしまった。
釣られて佐藤も笑った。
その晩ごはんも佐藤におごってもらった。
「金は残ってるか?」
店を出て、佐藤は私を振り返る。
「あ、残ってます。お返ししますよ」
「いや、それはいい。当面の生活費があればいいが、なければいくらか置いておこうと思ってな」
「それは……大丈夫だと思います」