そして三か月後にやっぱり無理でしたと言って断り、私は別人となってこの島からドロンする。佐藤が言いたいシナリオは多分そういうこと。

「私は役所に行って、とりあえず紹介された仕事をすればいいんですね?」
「だな。あとはご近所に挨拶だけはしておけ。何かと助けてくれるはずだ」
「でも……」

 胡桃山の姓がここでも邪魔をする。

「この島の住人の平均年齢知ってるか?」

 首を横に振る。
 
「63.4歳だ」

 還暦を過ぎていることに驚きが隠せない。

「ほとんどが還暦を過ぎ、皆、次の日の朝に無事に目覚められるかを心配ばかりしている連中だ。この島でネットがつながってるのは役所くらいなもんだし、そもそもインターネットがどのようなものかもきっと理解してねぇ。スマホを持ってる奴なんてほとんどいないし、携帯の電波もつながらないところが多い」

 思わずスマホの画面を確認した。辛うじてアンテナは二本。

「違う部屋にいったらつながらないと思うぞ。ここはそういうところだ。未来永劫、ずっとここに暮らすつもりなら心配するのも当然だ。だがたった数カ月なら心配はいらねぇ。きっと大丈夫だ」

 そう言われ、納得せざる得なかった。