「反省?」
「誰のせいでこんなことになってると思ってるんですか?」
「まぁそんなにカリカリするなよ」
「だってさっきから一言もしゃべらないし、さっさと先に行っちゃうし」
「悪ぃ。実は船が苦手なんだよ。すぐ船酔いしちまう。口に開いたら吐きそうだったんだよ」

 大分落ち着いたけどな。そう言う佐藤の顔色は確かに青ざめていた。
 
「だったら最初から言ってくださいよ。怒らせたのかと思って心配しました」
「いい年こいて、そんなこと言えねぇよ」

 そんな佐藤の態度が少し可愛く思えて、笑ってしまった。

「嬢ちゃんは田舎の移住支援に参加して、今日からこの地区で暮らす。なぁに別にずっとここに住めってことじゃねぇよ。お試し期間は三か月。期限が近づいたところで定住する意思があるかが確認される」
「そこで断われと?」
「ここで一生暮らしたいか? それも胡桃山美月として」

 私は首を横に振る。田舎で住むだけらいざ知らず、胡桃山の姓を背負い、事件の被害者遺族として狭いコミュニティに身を置きたくはない。