私がうなずいたところで、佐藤はシートベルトを外し、車外に出た。荷台から大きな紙袋を出してきた。大きさの割に軽そうに手から下げて、どんどん先に行ってしまう。

 私も慌てて後を追う。

 5分も歩けば連絡船乗り場に着き、佐藤は迷うことなくチケットを二枚購入した。そのうちの一枚を私に差し出してくる。

「船に乗るんですか?」
「まぁな」

 貼られている時刻表を見て、あと15分で出港だななんて佐藤はサラリと言う。
 
「あの……もしかして島に渡るんですか?」
「そうだ」
「まさか島で暮らせって言うんじゃないですよね?」
「他に何があんだよ?」 

 ある程度の都会ならいざ知らず、島なぞに住めば、必然的に人間関係が密になる。

「無理です」

 胡桃山という珍しい名字を島民の誰か一人でもネットで検索をかけたならば、たちどころに事件のことが露呈する。