今回はどれほどの長旅になるのだろうかとおぼろげにそんなことを考えながら景色を眺めていたら、ものの30分もしないうちに、佐藤は車を海沿いのパーキングに入れた。

「まず、これを渡しとく。後でいいから読んどけ」

 封筒を渡された。中を覗けばクリアファイルが見える。
 
「胡桃山美月。年齢も血液型も知っての通りだ」
「母は……?」

 それが一番の疑問だった。また母親と一緒に暮らすことになるのか。

「死別だ。そういうことになってる」

 そういうこと? つまりは母もまた別人として生きているということか。

「幸せなんですかね?」
「さぁな。余計なことは考えない方がいい」

 佐藤から母親はもう赤の他人だと言われたことを思い出す。母親の元から逃げたのは私だ。母のことを気にかけることも、ましてや現在のことを知ろうとすることも望んではいけないことだ。

「……分かりました」