「し、仕方ねぇだろ。不景気なんだよ。パーっと外車でも乗り回してみたいけど、夢のまた夢だろうな」
「何も言ってませんよ」
「目が語ってるんだよ。おいおい、随分安っぽい車になったなってさ」
「そんなことないですって」

 いやいやいやいや。佐藤が私に向かって指をさす。
 
「その目だ。その目が笑ってるんだって」

 笑ってないですよ。そう反論しようとする前に佐藤はそっぽを向いてしまった。

 とにかく乗れ。移動すっぞ。

 佐藤にそう促され、私は助手席に乗った。

「中は思ったより広いだろ?」

 素直にペコリとうなずく。高級感はないが落ち着いた室内。ダッシュボードかやけに広いなと眺めていたら、やっぱり小せえ車だと思ってたんじゃねぇかと佐藤に突っ込まれ、だからそんなこと思ってないですってと同じような問答が続く。
 
「あんまりモタモタしていたら夜になっちまう」

 佐藤は車を発進させた。

 出口で精算をして、駅を離れ、西へ西へと進んでいく。