駅前に出て、ようやく佐藤が私の腕を離した。

「ナンパなんかされてんじゃねーよ」

 いつものくだけた口調に涙がにじみ出た。
 
「だって……」
「おいおい、嬢ちゃん、まさかまた泣くつもりじやねぇだろうな」

 私は縦にも横にも首を振った。

 ホッとしたのだ。本当に佐藤と合流できるかずっと不安だった。

 今は胡桃山美月でもなく、田中伊織と名乗っていいのかも分からない。そんな宙ぶらりんな状態で下手に警察にもいけない。頼れる相手があるとしたら、それこそが佐藤だった。佐藤しかいかなった。

 その佐藤と音信不通になったら。土下座はしたものの、私と関わるのが面倒になったら。

 どこかでずっとそんなことを考えていた気がする。
 
 佐藤についていき、駅前のコインパーキングにたどり着いた。

 以前の大きなSUV車とは違い、コンパクトカーになっていた。日本で一番規模の大きなメーカーの空色の車だ。