食べ物がテーブルにところ狭しと置かれ、あまりのボリュームに圧倒されつつも、無我夢中で頬張った。

 お勧めされることだけあり、海鮮丼は確かに美味しかった。もちろん、エビフライはプリプリだったし、ヒラマサも歯ごたえがよく、脂ものっていた。

 食べ残すことなく、何とか胃袋に押し込むことができた。お腹をさするようにして店を出たところで私は激しく後悔した。

 ――今田が立っていたのだ。
 
「あ、来てくれてたんですね?」

 一見して人のよさそうな笑み。でも私はどうしてかこの笑顔に身震いを覚える。

「一昨日、あなたにこの店、紹介したら僕も海鮮丼食べたくなっちゃって」

 ここて鉢合わせたのは本当に偶然なのか。実は昨日も来ていたのではないかと勘ぐってしまう。

 私はとっさに作り笑いを浮かべた。
 
「そうなんですよ。昨日は急な用事がてきてしまって来られなかったので、今日こちらにお伺いしました。海鮮丼、本当に美味しかったです。ありがとうございました」

 ペコリと頭を下げ、そそくさと横を通り抜けようとしたが、そうは問屋がおろさなかった。