やがて大通りは海のある西に向かってアーチを描く。

 駅周辺は住宅地が広がっていたが、駅を少し離れるとすぐに田園地帯へと装いを変える。田畑の合間に家がポツポツと建っているだけで、代わり映えはしない風景にすぐに飽きてしまう。

 歩きながら、つい先日の占い師の言葉を思い出していた。

 気持ち悪いくらいにズバズバと何もかも当てる占い師だった。

 逃避行であること。西に向かっていること。そして――美月という名前まで。
 
 彼女の言葉にあがなうこともできず、私は導かれるままに彼女の対面のイスに座っていた。

「いいかい? 次の町に着くと男に声をかけられるかもしれない。なぁにパッとしない平凡な男さ。一見、おとなしそうで無害にも見える。でも違う。その男は危険だ。決して気を許してはいけないよ。分かったかい?」

 占い師のそんな言葉を聞き、真っ先に浮かんだのが佐藤の顔だった。確かに親切にしてくれている。無害かどうかは分からないが、少なくとも田中伊織という人間として、つい最近まで幸せと言っていい日々を送ることができたのは紛れもなく佐藤のおかげだ。