まずは駅の真ん前から海方向に向かう道を地図上でたどった。その道は地元民しか使わないような裏道なのか、細くかつクネクネと曲がっている。何度か道が折れていくうちに地図上でも分かるくらいに道幅が狭くなり、やがて民家にぶつかって途切れてしまった。

 呆気なく撤退。

 次は駅の南側を走る大通りをたどることにした。
 
 大きくカーブを描き、大回りをしているものの、やがて西に真っすぐに向かう道になり、予想通りそのまま海にぶち当たった。その合流地点で防波堤が湾を形成しているのが地図上でも分かり、その場所を拡大していくと、案の定"宮内漁港"の表示を見つけた。

 ――ここだ。

 宮内漁港の適当な場所をタップし、目的地アイコンが表示させ、続けて経路の文字をタップした。

 即座に住宅内の細い道を駆使した道順が表示される。所要時間1時間24分。距離にして5.6キロ。
 
 この逃避行では度々、知らない町を散策する機会があった。めくら滅法《めっぽう》に歩き回っても構わなかったものの――実際、そうやって歩いて迷子になったこともあった――、元来、方向感覚の鋭い方ではないと自覚している私は、宿に戻ることを考慮に入れて、地図アプリに頼って歩いてきたのだ。

 結果、地元住民に鋭利な眼差しを向けられたことが度々あった。