この町での最初の目的地を決めようと思った。

 電車の中で資料は確認している。資料の観光欄には、"漁港へ行く"と"魚を食べる"と記されていた。資料を渡された日に、守らなければならないのは滞在日数だけで、その他はオススメ程度だと佐藤に言われていたものの、結局最後の最後まで、資料の通りに行動してしまっている。宿にこもるなと言われていたし、自分で調べるよりは資料通り行動する方が楽だったのだ。ただしショッピングという文言にはほとほと困らされたが。

 まずは漁港に行こうと考えていた。漁港にさえ行けば、同時に魚の食べられる店も見つかるのではないかという淡い期待まで胸に抱いている。
 
 一気に二つの目的を達成した場合、あと二日間をどう過ごすのかと思わなくもないが、ゴール目前だ。あと二日くらい何とでもなるという思いの方が強い。

 私はスマホを手にして、地図アプリを起動させた。即座に地図が表示され、画面の中心――ざっくり長方形で表された駅舎とバスロータリーの間――には青い点が点滅している。まさに今私がいる場所だ。

 表示されている地図の縮図では駅周辺しか表示されていない。ピンチアウトし、画面の範囲を広げていく。

 海はすぐに分かった。今立っている場所からすると駅の反対側になる。漁港はどこにあるのだろうか。