いよいよ最後の町にたどり着いた。天晴《あっぱれ》なほど空は晴れ渡り、空気も清々しい。

 11月も下旬。師走がすぐそこまで迫ってきていた。

 駅前には広めのバスロータリーとタクシー乗り場があったが、時間帯のせいなのか、車も人も少なく閑散としていた。

 駅を出て早々、私は天に向かって大きく伸びをした。

 逃避行もあと三日。この町でいよいよ佐藤と合流することになる。ただし、連絡を取り合ってるわけではないから、予定通りに私が胡桃山美月に戻る準備が進んでいるのかは分からない。
 
 実はもう少し時間がほしいと佐藤が言ってくるのではないかと数日前からソワソワしていたのだ。もっとも私は佐藤の連絡先を知らないし、今の今まで佐藤から連絡がないということは、手続きが順調なのだと信じて待つしかない。

「――さてと」

 時刻は午前10時を回っていた。

 宿にチェックインするには早い時間だから、改札の近くにあったコインロッカーに大きな鞄は預けていた。今は肩掛け鞄一つだけの身軽な出で立ちだ。もっともお金やスマホなど大切なものを全て入れているものだから、見た目よりずっと重いのだが。