占い師は、誰しもが共通することをもっともらしく言葉にして、相手から具体的な情報を引き出す。これをコールドリーディングというらしい。彼にからかわれたのが悔しくて、これでも少し調べたのだ。

 占われている人間の方からどんどん真実を口にしてしまい、これ幸いと占い師はその情報を使う。曖昧な情報からどんどん具体的な情報に取って変えられ、自分から答えをバラしてしまっていることにも気づかず、あたかも占いが当たってるような気になってしまう。
 
 結局は当たるも八卦当たらぬも八卦。占いはその程度で身構えておけということを調べて痛感した。

 では、今はどうだ。私自身が発した言葉を反芻する。私は何も具体的なことは話してはいない。ただひたすらに断り続けていただけ。

 なのに目の前の占い師はズバズバと何もかもを言い当ててしまう。逃避行であること。西に向かっていること。さらには美月という名前まで――。
 
 長い髪の毛の奥、ほとんど隠れている目が三日月のように細まった気がした。

「占いをなめてもらっては困るよ」

 全てを見透かされてる。私はあがなうことができなかった。

「いいからとにかく座りなよ」

 言われるがまま、私はイスに座った。