しかし喫茶店を出て少し歩いたところで景色が怪しいことに気づいた。道に迷ってしまったのだ。

 鞄の中のスマホに手を伸ばす。地図アプリを開けば現在地が分かる。宿の住所を打ち込めば経路も分かるが、最近はそれさえも食傷気味で、出しかけたスマホを鞄に戻した。

 スマホは最後の手段だ。もうしばらく自力で頑張ってみよう。
 
 記憶と勘を頼りしばらくウロウロと歩いてみたものの、見覚えのある場所には出てこない。

 やがて幅が車1台半くらいのガード下に出た。もっともポールタイプの車止めが等間隔で設置されているため、通れるのは歩行者と自転車、オートバイくらいだろう。

 ガード下の入り口で私は首を傾げた。ガード下をくぐった記憶はない。しかし昼間、駅ビルをウロウロしていた。ビルの周辺はペデストリアンデッキで違う建物とつながっていたものだから、無意識に線路をまたいでしまっていても何ら不思議ではない。
 
 とりあえずガード下をくぐって線路の向こう側に向かうことにした。

 丁度真ん中辺りで、椅子に座り、俯き加減の女性の姿が目に入った。彼女の前には角型のテーブル。足元には"占います"の立て札。

 ドラマでもあるまいし、こんな通行量の少ない場所で商売をする占い師がいるのかと少し意外に思った。とはいえ、興味がそそられるわけでもなく、そのまま占い師の前を通り過ぎようとしていたまさにその時、声をかけられた。