ホテルにこもってたら怪しまれると佐藤に言われたからできる限り外出するように心がけているが、ホテル暮らしで、場所を転々とする日々。さしあたって必要なものは既に揃えてしまっている。

 じゃあ、あとは何を買えというのか。

 封筒にはまだそれなりのお金が残されている。こうなったら芸能人のように一度着たものはその都度捨てて、移動する度に新しい服を買ってやろうかと考えたこともあったが、何だかそれはそれで私の足跡を残していくような気もするし、やはりもったいない。結局、コインランドリーを見つけては利用し、同じ服をローテーションで着回す日々が続いている。
 
 ファストフードの店を出たところで、私は目の前の繁華街に目を向けた。

 ドラッグストア、和菓子屋、喫茶店が並んでいる。ドラッグストアで念の為にと風邪薬と胃薬を買い、和菓子屋でどら焼きを一つ買った。喫茶店は素通り。

 その後、一人カラオケで一時間ほど時間を潰し、喉が乾いたので、先程素通りした喫茶店に入った。

 可愛らしくクリームソーダなんて飲みながら、追われるようにあくせく働いていた時のことを思えば、こんな時間の使い方は、本当に贅沢なんだろうなとしみじみと感じるものの、楽しいかといえば残念ながら否だ。
 
 話し相手が欲しい。仕事の苦労を愚痴れる友達の存在が懐かしい。孤独の辛さが味気なさが物足りなさが、今はしみじみ痛い。

 喫茶店で思いのほか時間を費やし、一度宿に戻ろうと考えた。