だから、このチラシはまさに渡りに船だといえた。

 私は世間から逃げていた。まだ中学生の私が――だ。

 どうして世間から逃げているかと言えば、私が10歳の時に起きた事件から端を発している。

 忘れるはずもない。4月27日。快晴。清々しい朝だった。雀だかムクドリだかの小鳥のさえずりまで鮮明に思い出すことができる。

 小学校に行く途中、私は何となく通学路沿いにある公園の桜の木を見上げた。理由は分からない。呼ばれたような、意識が引っ張られたような、そんな感じ。

 少し前まで花が咲いていたことが嘘のように、桜は新緑の葉を纒い、悠然と佇んでいた。花ではなくあくまで樹木なのだと、今更ながらに私に知らしめていた。

 その桜から目が離せなかったのは、憂いというかもの寂しさというか、子供なりに"予感"のような何かが胸の中で込み上げてきたからだ。