「悪いが、1ヶ月半、鈴木博子として逃げてくれるか?」

 真っすぐ私を見る眼差しはいつになく真剣だ。佐藤が必死なのは伝わった。この事態を何とかしたいということも。

 私はゆっくりとうなずいた。

「なら、話は早い。今から出発してくれ」
「え?」

 佐藤は大きな鞄の1つを私の前に置いた。

 中にスマホと当面の逃亡資金が入っている。それと着替えだ。

 また勝手に見繕ったのだろうか。新品で袋に入ったままの下着や、Tシャツやスカート。
 
 これから秋に入る。涼しくなることも考慮してか、薄手のカーディガンまで。

「趣味悪っ」

 そう言い放つ。

「まぁ、そう言うな。これが俺のセンスの限界だ」

 安易に限界と言われ、笑ってしまった。

「悪いけど、頼むよ」

 私はうなずいて、早速、準備に取り掛かった。