「実は、嬢ちゃんが再び胡桃山美月として生きていけるようにするにも、二ヶ月から三ヶ月くらいの時間が必要だ」
「もともと私の人生なのに?」
「あんたが田中伊織だった約8年の間は、別に人間が使っていた。それも二人だ。その辺りの齟齬をなくすよう、一つ一つ調整しないといけねぇ。だが、今回は俺のミスだ。一ヶ月半でなんとかする」
今の逼迫《ひっぱく》した状況から考えるとたった半月の短縮としか言いようがない。一方で、今まで他人が歩んできた人生を、私が歩んで差し支えないように調整するというところまで考えるとなると、されど半月ということになるのだろう。
「ここでジッとしていたら、身柄を拘束される可能性があるから、一刻も早く移動を開始したい。だから――これだ」
佐藤は鞄からもう一部、資料を取り出した。やはりクリアファイルに入れられている。区別するためだろうか。先程は透明なクリアファイルなのに対して、こちらは薄いプルーの色のものに入れられている。
私はクリアファイルから資料を取り出して開いた。
そこには最終目的地までの道のりと費やす時間が地図に記されていた。
私の逃避行は現在地から西へ西へと向かうルートになる。途中の地点には丸で囲った数字。この数字は何なのか。
「もともと私の人生なのに?」
「あんたが田中伊織だった約8年の間は、別に人間が使っていた。それも二人だ。その辺りの齟齬をなくすよう、一つ一つ調整しないといけねぇ。だが、今回は俺のミスだ。一ヶ月半でなんとかする」
今の逼迫《ひっぱく》した状況から考えるとたった半月の短縮としか言いようがない。一方で、今まで他人が歩んできた人生を、私が歩んで差し支えないように調整するというところまで考えるとなると、されど半月ということになるのだろう。
「ここでジッとしていたら、身柄を拘束される可能性があるから、一刻も早く移動を開始したい。だから――これだ」
佐藤は鞄からもう一部、資料を取り出した。やはりクリアファイルに入れられている。区別するためだろうか。先程は透明なクリアファイルなのに対して、こちらは薄いプルーの色のものに入れられている。
私はクリアファイルから資料を取り出して開いた。
そこには最終目的地までの道のりと費やす時間が地図に記されていた。
私の逃避行は現在地から西へ西へと向かうルートになる。途中の地点には丸で囲った数字。この数字は何なのか。