「だったら尚更、ここで大人しくしておいた方がいいんじゃないですか?」

 そんな騒動に巻き込まれたくなんてない。

「嬢ちゃんの言い分も分かるが、実はこの部屋は、シムテムが使える人間なら簡単に押さえることができる。嬢ちゃんの名前までは分からないが、いかんせん、俺が押さえてることは分かっちまう」

 佐藤が私以外に田中伊織の人生を売った商売敵が分かったように、向こうも佐藤なことを認識しているということだろう。

 その佐藤がこのタイミングでこの部屋を押さえている。ならば、誰が使っているのか――と安易な推理で私に行き着いてしまうことを佐藤は危惧している。
 
「最終目的地っていうくらいなんだから、いくつか目的地があるって解釈でいいんですか?」
「いや、複数の目的地があるというより、最終目的地までこちらの指定するだけの時間を費やして進んで欲しいんだ」
「時間を費やす?」

 佐藤の言ってる意味か分からない。