書類に記載されていた名前は――胡桃山美月だった。もちろん同姓同名というオチではない。生れたた瞬間から、田中伊織になるまでの間ずっと私が歩んできたものだ。
「散々探したが無理だった。嬢ちゃんが外を歩けるようになるのに最低半年はかかる」
婚約者に騙され、未遂には終わったが父親に襲われた。
田中伊織のまま逃げ続けてもいいが、哲史が捜索願を出したら面倒だ。やはり半年は待てない。
「私は胡桃山美月になって、どこに行けばいいんですか?」
「最終目的地は――」
「最終?」
「本来なら、ここで待機して貰って、準備が整い次第、現地に直行ってなるんだが、そうも言ってられなくなった。あんたの元旦那――いや婚姻届が受理されてないんだから、彼氏か。とにかくその彼氏に田中伊織の人生を売った俺の商売敵が、システムの運営側からあれこれ言われてあんたを探してるらしい」
「私を?」
「評判のよくない奴でな、多分、無理やりあんたを別人にして、丸く収めるつもりだと思う」
「でも半年はかかるって……」
先程佐藤がそう言ってたではないか。
「全国指名手配になってて、生存が確認できないやつを押し付けるんだよ。マッチングもへったくれもない。性別と大体の年代さえ合ってればいいって、その程度で見繕ってくる」
聞いてるだけでゾッとした。
「散々探したが無理だった。嬢ちゃんが外を歩けるようになるのに最低半年はかかる」
婚約者に騙され、未遂には終わったが父親に襲われた。
田中伊織のまま逃げ続けてもいいが、哲史が捜索願を出したら面倒だ。やはり半年は待てない。
「私は胡桃山美月になって、どこに行けばいいんですか?」
「最終目的地は――」
「最終?」
「本来なら、ここで待機して貰って、準備が整い次第、現地に直行ってなるんだが、そうも言ってられなくなった。あんたの元旦那――いや婚姻届が受理されてないんだから、彼氏か。とにかくその彼氏に田中伊織の人生を売った俺の商売敵が、システムの運営側からあれこれ言われてあんたを探してるらしい」
「私を?」
「評判のよくない奴でな、多分、無理やりあんたを別人にして、丸く収めるつもりだと思う」
「でも半年はかかるって……」
先程佐藤がそう言ってたではないか。
「全国指名手配になってて、生存が確認できないやつを押し付けるんだよ。マッチングもへったくれもない。性別と大体の年代さえ合ってればいいって、その程度で見繕ってくる」
聞いてるだけでゾッとした。