変化があったのは、クリスマスが近づいた12月のことだ。

 1時間目の授業が終わった後の休み時間、クラスの女子生徒の一人が意味深な笑みを浮かべて、私の机にやってきた。

 手にはスマホ。基本的に校内でのスマホの使用は禁止だが、休み時間には皆、鞄から出していじっている。片田舎にも、ご時世というものがあり、よほどのことがない限り、教師も注意したりしない。

 もちろん私の家にそんな余裕はないからスマホは持っていない。

 以前、どうして持っていないの? とクラスメイトに聞かれたことがあったが、親が厳しいからと言っておいた。開き直って、貧乏だからと言ってもよかったが、貧乏を逆手に取ってイジメの対象にでもなったらたまらない。

 全ては生きるための知恵。誰にも迷惑をかけない嘘を、父の事件の後、私は度々駆使するようになっていた。

「ねね、胡桃山さん、これ見て」

 女子生徒は嬉々としてスマホの画面を私に見せてきた。過去のニュース記事だ。