「オイオイ。何、けったいなこと言ってるんだ?」
「けったいも何もそれが現実ですし」

 マジかぁ。佐藤は大きな大きなため息をつく。

「そんなことあるのかぁ? だったらシステム管理者に言わないと」

 どことなく他人事の口調の佐藤に腹が立った。

「だったらさっさと連絡取って、直してもらってくださいよ。それより、私はこれからどうしたらいいんですか?」
「別に今まで通り田中伊織として生きて行けばいいだろ?」
「それは無理です」

 田中伊織でいる限り、哲史との親子関係も続くということになる。

 先程の哲史とのことを佐藤に話した。哲史は基本はゲイでも、綺麗なものは男女問わず好きだということ。そしてソファに押し倒されたことさえも。

 逃げおおせたのは本当に運が良かっただけだ。じゃなければ今頃は――と想像しては、震えに襲われる。