「そうだね。確かに僕は男か好きだよ。特に若くて綺麗な男なんて最高だね」
「だったら私なんか――」
「君は誤解してるみたいだから言っとくけど、根本として僕は綺麗なものが大好きなんだ。男、女に限らずね。そして僕は君に会った時から綺麗だなと思ってた。確かに最初はまだあどけなかったけど」

 哲史の顔が近づいてくる。私は必死に顔を背けた。

 哲史のささめきが不快に鼓膜を刺激した。

「年を追うごとにどんどん綺麗になりやがって。こっちがどれだけ我慢してきたと思ってるんだ」
「知らない……そんなこと知るわけがない!!」

 哲史に押し倒れた。狭いソファの上、哲史に乗られてしまって身動きが取れない。

「止めてよ!! 止めて!!」

 哲史の顔が首元に寄せられる。唇が首に当たる感触。背筋を怖気《おぞけ》が走る。

「嫌……嫌!!」

 涙が頬を伝う。怖い。悔しい。頭の中、佐藤に忌みごとを投げつけていた。