「うん。工場の受注が減っちゃってねぇ。やることないからパートはみんな早引け。こっちは時給で雇われてるんだから参っちゃうよね。もったいないからスーパーにも寄って来なかった」
「ごめん。こんなに早く帰ってくると思ってなかったから、晩ご飯の支度、何もしてない」

 晩ごはんのおかずを一品二品作るのが約束ごとのようになっていた。

「いいよいいよ。それくらいするから。それより、宿題とかないの? あるならやっちゃいなさいよ」
「うん、分かった」

 逃げるように私は鞄を手に、隣の部屋に移動した。この六畳間は私と母の寝室だが、母が寝るまでは私の勉強部屋として占拠が許されている空間でもある。

 折りたたみ式のちゃぶ台を広げ、その前に私は座る。宿題がなかったわけではないが、今はとにかくチラシのことが頭から離れなかった。

 鞄からチラシを出して来て、ちゃぶ台の上に広げた。当たり前だが文面も内容も何一つ変わらない。