宗教か? でも、それならば救いの会だとか、幸せの翼だとか、主張するこれみよがしな団体名が記載されていてもおかしくない。

 人の弱みにつけ込んだ詐欺の類の可能性が高い。

 ならば的外れというものだ。こんなオンボロアパートに住む人間から絞れ取れるお金なんてたかがしれているというものだ。

 しばらくボーッとチラシを眺めていた。いかがわしいチラシなのに、捨てることも目をそらすこともできなかったのは、私の求めていることが、この一行に全て凝縮されているからだ。

 突然ガタリと音がして、玄関のドアが開いた。私はとっさにチラシを鞄に突っ込んでいた。

「ただいまぁ」

 ややくたびれた、でも聞き慣れた声。

「おかえり……今日、早くない?」

 母がパートから帰ってきたのだ。普段なら仕事帰りでスーパーに寄り、帰宅は早くても夜の7時過ぎる。しかし今日に限っては、まだ5時半にもなっていない。