祭は――多いに盛り上がったかと言われれば、素直に首を縦に振るところまではいかなかったものの、何とか体裁は守ることができたと思う。収支に至っても、ギリギリではあるが黒字。もちろん人件費が入っていないので、実際の商売ならば大赤字。話にもならない。

 そんなこんなで何とか研修が終わり、研修によってどんな評価が下されるかとドキドキしたものの、私は希望通り経理課に配属された。

 通常業務に入れば、毎日がある意味スリリングだった研修が嘘のように、一転してピンと張り詰めた空気にさらされる。

 覚えることは山のようにあった。先輩方の性質も分からないので、どこまで気を配ればいいのか、どこで気を抜いていいのかが全く分からない。
 
 一日中全力疾走を余儀なくされ、その余裕のなさから盆ミスが続いた。 

 最初のうちはミスは仕方ないからと先輩方は言ってくれているものの、そんな矢先にまた失敗を繰り返し、予想以上に激しく叱責をもらうこともしばしばだ。

 ヘコむ。落ち込む。投げ出したくなる。もちろん仕事は待ってくれない。歯を食いしばって前を向く。

 ふと、あぐりでバイトを始めた頃のことを思い出してしまった。久しぶりに彼とあぐりに行くのもいいかもしれない。私たち結婚します。桜木の前でそんなことを言ったら祝福してくれるだろうか。