そうこうしているうちに、料理が運ばれてきた。

 料理は本当にどれも美味しかった。前菜の軍鶏《しゃも》とピスタチオのテリーヌは絶品だったし、スープドポワソンには、小さな絶叫が口から漏れた。

 魚料理も肉料理も体が震えた。どれもこれも今まで口にしたことのないものばかりで目にも楽しめた。

 コースの途中にソルベという氷菓が出てきて、あれ? もうデザート? って顔をしたら、それは口直しだよと彼に笑われてしまって、かなり恥ずかしい思いをした。

 悔しかったので、分かってたしぃ、わざとだしぃと、捨て台詞を吐きながらほっぺたを膨らませていると、その顔はもっと好きなんだよと追い打ちをかけられ、タジタジになってしまった。

 最後に目の前には小さなケーキとコーヒーが置かれた。デザートのことをフランス語ではデセールということも知ったし、朱色のケーキがフランボワーズのケーキだと説明を受け、よく知りもしないでもっともらしくうなずいていたら、彼がラズベリーのことだよと笑いを堪えながら教えてくれたりもした。

「バカにしてるぅ」
「バカにしてないけど。知ってた?」
「知らないけど……」