はやっていないのか、たまたまか、私たち以下に人はいない。

「どうぞ」

 暖簾の奥から作られたようなしゃがれた声が私たちを出迎えた。

 気後れするも、促されるままに暖簾をくぐる。

 入ると狭い空間にテーブルと椅子が置かれている。テーブルの向こう側には、染めているのか地毛なのか、目までも覆うくらいに伸びた白髪の女性が座っていた。鼻から下は紫のフェイスベールで覆われていて、ほとんど顔は見て取れない。

 白髪の女性は、言葉を発することなく、素振りで椅子に座るよう促す。

 うなずいて私はおずおずと座った。椅子が1つしかないものだから、彼は私の後ろに立った。

 占い師は何も言わずカードをめくり始めた。タロット占いだ。タロットカードを実際に見るのは初めてだから、心の中で感嘆の声を上げていた。

「ほぉ……珍しい2人だね」
「珍しいとは?」

 占い師の目が私を捉えた。どこかでこの目を見た気がしたが、はっきりとはしない。いわゆる既視感《デジャブ》という奴か。

「共通点が多いね」
「そうなんです」

 ズバリ言い当てられ、何だか嬉しくなってしまった。